2011年06月26日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:1-




静かで長い夜の過ごし方は、人によってそれぞれ...
星の間を彷徨うのも...  月の明かりに愁うのも...
その心模様一つで決まるのだとか...

さて...
今宵この店に集いし人々は...
どんな夜を過ごすのだろうか-----



   女 「-----もう駄目なの... お終いなのよ....。...ごめんなさい... さよなら... 」


まるでシェイカーの音が合図のように...
彼女はそっと受話器を置いた.....

やがてグラスに注がれるカクテル-----


バーテン 「お待たせいたしました...  どうぞ」


彼女の前にグラスが置かれた-----


   女 「...どうも... 」

マスター 「今夜はお元気がないご様子ですね... 」

   女 「エ?... 」

マスター 「それともわたくしの気のせいでしょうか...  そんな風に感じるのは... 」

   女 「...何をどうすればいいのか、わからなくて... 私」

バーテン 「どうかされたんですか...?」

マスター 「失礼ながら... 顔色もよろしくないようで... 」

   女 「..... 」

マスター 「何ですか穏やかな雰囲気ではないようですね... サヨコさん」

   女 「いいんです... もう終わったんですから... 全部ね」

バーテン 「そう云えば...  先程お電話でもう駄目だとか、さよならだとか... 」

   女 「... 聞こえてたんだ... 」

バーテン 「あ、すみません...  そんなつもりじゃなかったんですが... 」

   女 「いいんです、別に...  気にしないでください... 」

マスター 「まさかあの方と...?」

   女 「... そうですね...  たった今、さっきの電話で... 」

マスター 「サヨコさん... 」

   女 「もっとも、彼に直接云えませんでしたけどね... 何しろ留守番電話だったから。
      一方的にメッセージを伝えただけで... 」

バーテン 「一体どうされたんですか? ... あんなに仲良くされてたのに... 」

   女 「そうよね...  ホントにそうですよね... どうしてこんな事になっちゃったん
      だろう... 私にもよくわからない...  どうしてこんな事に... 」

マスター 「何か... 余程のご事情がおありのようですね... 」

   女 「..... 」

マスター 「くゆらせたままで消えたタバコが、わたくしにそう伝えているようで... 」

   女 「... マスター... 」

マスター 「静かで長い夜の過ごし方は、人によってそれぞれ...  星の間を彷徨うのも
      月の明かりに愁うのも、その心模様一つで決まるようです... 」

   女 「... 心、模様... 」

マスター 「この店は...  そんな様々な夜を過ごされる方のためにある、ちょうど
      止まり木のようなものです... 」

   女 「止まり木... 」

マスター 「ですからどうぞ束の間...  その疲れた翼をお休めください... 」

   女 「マスター... 」

マスター 「サヨコさん...  この店は、そんな店なのですから... 」

   女 「...ありがとう、マスター... 」

バーテン 「止まり木とは... 安逸の酒場の如しか... 誰かがそんなことを云ってましたね」

マスター 「それが酒場が酒場である所以だと...  わたくしはそう思ってます」

バーテン 「そうですね... そうありたいですね...  少なくともこのお店は... 」

   女 「(思い詰めたように)マスター...  実は私... 」


その時、店のドアが開いた.....
そこには一人の男性が---


バーテン 「いらっしゃいませ... 」

マスター 「ようこそ... 」

   男 「どうも...  今晩は」


posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
blogramで人気ブログを分析 にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。