2011年06月24日

千夜一夜 / アラカルト -scene:4-


旅立ちの前夜は... 彼女との記念の一夜となった-----

凛としたその面持ちと...
透き通った優しい響きの声を聞かせてくれた、その女性との出逢い...

私はいつしか、彼女との再会を願っていた-----



琥珀色にベールに包まれた店内で...
そのカルキュレイションが始まった-----


バーテン 「それではまず簡単なところから...  ジン+レモン+シロップ+ソーダ...
      イコールは?」

   男 「はなはだ優しい計算だな... ジン・フィズだ」

   女 「そうですね」

バーテン 「次に...  そのジン・フィズからソーダを引くと何と呼ばれるでしょうか?」

   女 「それは... ジン・サワーです」

バーテン 「では同じくジン・フィズからレモンを引いた場合は何でしょう... ?」

   男 「確かジン・リッキーだったかな...?」

バーテン 「いいえ、残念ながら... 」

   女 「ジン・スリングですね、それは」

バーテン 「流石ですね... 」

   男 「よし...  ベースを変えてみてくれないか」

バーテン 「はい...  それではソルティ・ドッグからソルトを引けば...?」

   男 「ブルドッグだな」

バーテン 「では少し複雑にします...  マンハッタンからチェリーを引いて、パセリを足すと
      どうでしょうか...?」

   女 「チェリーを引いてパセリだと...  そう、セントラルパークですね」

   男 「何だかジョークみたいなカクテルだな、そうなると」

バーテン 「そうですね... でも本当にそう呼ばれてますからね...」

   女 「それにしてもこの調子で話してると、あっという間に夜が明けちゃいますね」

   男 「それは云えるね... 何しろカクテルの数だけ公式があるんだからな... 」

バーテン 「カクテルだけでなく、お酒に纏わる話は、尽きることはありませんからね」

   男 「ひょっとすると、千夜一夜...  語り明かせるかもしれないな... 」

   女 「千夜一夜か... 」

バーテン 「さしずめ今夜は、その第一夜というところでしょうか... 」

   女 「素敵ですよね...  そういう夜って... 」

   男 「マスターがいれば...  もっとよかったんだがな... 」

バーテン 「明日の夜には、店におりますが... よろしければ、明日の夜また...」

   男 「それが駄目なんだな...  今夜でしばらくお別れなんだ... この店とも」

バーテン 「エッ...?」

   男 「明日の午後一番の飛行機で、日本を発つんだ... 」

バーテン 「そうでしたか... 」

   男 「仕事でね...  今度はロンドンだ... 」

バーテン 「で、今度日本へはいつ頃...?」

   男 「いつになるかな...  仕事が片付き次第としか、今は云えないな... 」

バーテン 「そうですか... 」

   男 「最後にマスターに会えなかったのは残念だったが...  君や彼女のお陰で
      それなりに楽しい夜を過ごさせてもらったよ... 」

バーテン 「恐れ入ります... 」

   男 「漂流船が唯一錨を降ろせる港だからな、ここは。 またふらりと戻ってくるよ... 」

バーテン 「その日をお待ちしております... 」

   女 「でも残念ですね...  折角、お知り合いになれたのに... 」

   男 「そうだね...  確かに残念だな... 」

   女 「そうだ...  今度日本に戻られた時には、是非、私のお店にもいらして下さい...
      私、腕を振るいますから」

   男 「ありがとう...  覚えておくよ、君の事は」

バーテン 「良ければ私も一度...  そのお店に寄せて頂こうかと思ってるんですが...
      よろしいでしょうか...?」

   女 「光栄です。いつでも、どうぞ... 歓迎します」

   男 「ところで、肝心のその店の名前は何ていうのかな?」

バーテン 「そうでしたね...  まだお店の名前も、それにお客様のお名前も... 」

   女 「失礼しました...  私の名前は、緒方涼子... 」

バーテン 「緒方涼子様... 」

   男 「響きのいい名前だな...  それで店の名は...?」

   女 「お店の名前は...  ブランシュ・ネージュ... 」

バーテン 「ブランシュ・ネージュ... 」

   女 「フランス語で...  白雪姫という意味です」

   男 「白雪姫か... 」



次の日の午後-----


空港のロビーに流れるアナウンス....
私はカバンを持ち、歩き出した...

ほんの少しばかりの未練を残して
私は日本を後にした.....


飛行機の離陸音-----




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posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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