2011年06月22日

千夜一夜 / アラカルト -scene:2-





その夜は... 彼女との出逢いの一夜となった-----

涼しげな瞳をした...
それでいてどこか親しみを覚える、その女性との出逢い...

それはオールド・パーに纏わる話しから始まった-----



ゆっくりと時が流れる店内----


   女 「トーマス・パー... 彼は1483年、スコットランド生まれの農夫で、八十歳で
      結婚をし、百五歳に村の美女と不倫、百二十二歳でその女性と再婚...
      そして百五十二歳でその生涯を終えたという、すごい人物だった...
      そこで、その彼の長寿にあやかってオールド・パーのラベルには「オールド・
      パー152years」と記され、名付けられたと云われています... 」

   男 「たいしたもんだね... 」

バーテン 「よくご存知ですね... お手上げです」

   女 「いいえ... 私もこの手の話しが結構好きなものですから... 」

   男 「ついでに補足させてもらうと... ラベルに描かれているのが人物が、その
      トーマス・パー本人で、これはバロック美術の代表的画家であるルーベンスが
      描いた絵がもとになってるそうだ... 」

バーテン 「さすがですね... 藤堂様も」

   女 「お詳しいんですね... 」

   男 「私もお酒が好きだからね... 」

バーテン 「それにしても... このボトルのラベルに、それだけの謂れがあるなんて...
      思いもよらなかったな... 」

   男 「スコッチ・ウイスキーの中でも、ユーモアがある謂れを持つのが、このオールド・
      パーと云えるだろうな... 」

   女 「そういえば... 同じスコッチでも、ラベルの裏に謂れがあるものもありますよね... 」

バーテン 「ラベルの裏?」

   男 「というと...?」

   女 「そもそもラベルには、表側に貼ってあるメインラベルと、裏側のバックラベルの
      2種類の趣があって、そのバックラベルにちょっとした趣向を凝らしたお酒が
      あるんです... 」

バーテン 「そのスコッチとは... 何なんでしょうか...?」

   女 「ホワイト・ホースです」

   男 「ホワイト・ホース...?」

バーテン 「で、そのバックラベルには、一体どんな趣向が...?」

   女 「それは、バックラベルを見れば一目瞭然です」

   男 「見てみようじゃないか... そのバックラベルを」

バーテン 「そうですね... 百聞は一見に如かずですね... 」


バーテンはホワイト・ホースを取り出し、私のもとへ-----


バーテン 「... どうぞ」

   女 「いかかです... 細かい英語の文字が並んでませんか... 」

   男 「... 確かに... 」

バーテン 「何と書いてあるんでしょうか... 」

   男 「直訳すると...
      エジンバラからロンドンへ行こうとする人、あるいはその道のりのどこかまで
      行こうとする人は、エジンバラのホワイト・ホース・セラーに集まること...
      ここから毎週月曜日と金曜日の朝5時に、乗り合い馬車が出発する。行程は
      八日間... 云々...
      乗客の荷物は14ポンドまでは無料。それを超える時は1ポンドにつき6ペンス
      ... 1754年2月... 」

バーテン 「これは... 」

   女 「そう... 当時の駅馬車の乗車規定ですね... 」

   男 「確かにそうだな... でもどうしてそんなものをこのバックラベルに...?」

   女 「残念ながら、それは不明だそうです...
      ただ、製造者の思い入れやホワイト・ホースの歴史が、そのバックラベルによって
      静かに語られていることだけは、うかがい知れますよね... 」

バーテン 「バックラベルか... 」

   男 「... それにしても、ただの物知りじゃないね、君のその博学ぶりは... 」

バーテン 「確かにそうですね... 」

   男 「ひょっとして、君... 」

   女 「そうですね... 多分、お察しのとおりです」

バーテン 「どういうことなんでしょう? それは... 」

   男 「それはつまり... 君と同じってことだよ、バーテン君」

バーテン 「同じ... ?」

   女 「実は私も、カウンターでシェイカーを振る、バーテンなんです... 」

バーテン 「エ...?」




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posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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