2011年06月08日

時 間 -scene:4-




         時間と共にはじまるものがある.....

         またそれとは逆に...
         時間と共に終わりを告げるものがある.....

         それが出逢いであったり、別れであったり...

         人はすべて、時の流れの中で喜び、悲しみ...
         そして戸惑う...

         そう...
         ちょうどこの店のカウンターで今夜...
         グラスを傾ける彼も、その一人...


         灰皿に置かれたタバコの煙がゆっくりとくゆれている...
         それはまるで...
         彼の気持ちのように緩いカーブを描いて-----


男    「...あいつの心が今、揺れている... まさか...」

マスター 「いつでも、どんな時でも、そばにいてくれる彼と...
      自分のことを意外にも真剣に考えてくれていた顔染みの男友達...
      その狭間に立って彼女は今、本気で悩んでおられるのでは... 」

男    「あいつがそんな... 」

マスター 「ご自分でもどこかでそうそう思われてたからこそ、その時間を
      気にされていたのではないでしょうか... 」

男    「...それは... 」

マスター 「目をやってしまうから、腕時計を外して裏返しにされ... それでも気になって
      この店の時計に驚かれた... 」
  
男    「...確かにそうですよね... でも...」

マスター 「でも...?」

男    「いつだって待ってたのは、結局オレの方なんですよ...」

マスター 「.....」

男    「最初の時も、二度目の時だって... 結局オレがいつもあいつを待ってた...
      待たされてたんですよね... 」

マスター 「だから今度は、別の意味で彼女を待たせようと...?」

男    「いいんじゃないかと思ってますよ、一度ぐらい... 」

マスター 「本当によろしんでしょうか... このままで」

男    「...いいんですよ、これで... 」


         彼がゆっくりと、タバコをくわえた....


マスター 「今夜は最初から、行かれるつもりはなかったんでしょうか...
      お待ち合わせには」

男    「そういう分でもなかったんですよ... でも仕事がつかえちゃって
      会社を出る時にはもう時間が過ぎてたし、だから... 」

マスター 「そのまま行かずにいたと... お電話は... ?」

男    「何度かかけたけど、つながらなかった... 」

マスター 「そうですか... 」

男    「大体、そんな時間に行ったて、あいつが待ってるわけないし...」

マスター 「失礼ですが... お約束はどちらで... ?」

男    「神戸モスクで、8時に... 」

マスター 「8時ですか... 」

男    「もうかれこれ2時間近く経てるし... 」

マスター 「いいえ.. 正確には1時間半ぐらいですね... 」

男    「どっちにせよ、あいつはもういない... 待ってなんかいないですよ...
      普段から、たとえ10分でも待つことが嫌いな女でしたからね... 」


         そう云って、カクテルを一口飲んだ彼は...
         小さなため息をついた...


マスター 「そうでしょうか... 本当に... 」

男    「え?... 」

マスター 「彼女は本当に、待っておられないんでしょうか... 」

男    「100%、いや... 99%いませんよ、あいつはもう」

マスター 「ご自分で今言われた数字の、残りの1%の意味は... 」

男    「それは... 」

マスター 「期待でしょうか... それとも...?」 

男    「... 」

マスター 「たとえ1%でも可能性があると思われるのなら...
      その確率に賭けてみるというのはいかかでしょうか... 」

男    「残りの1%に賭ける...?」

マスター 「そうです...
      ちょうどその手元にある、バカラというカクテルの名前のように... 」

男    「バカラ... 」



posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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