2011年06月06日

時 間 -scene:2-




         そう云えば.....

         この店の時計は、いつも止まっていた.....
         とある時間を差したまま -----

         そのせいだろうか.....
         この店のドアを開けた瞬間から、空気が変わる -----

         まるで自分が違う世界に入り込んだような
         そんな雰囲気に包まれる.....

         果たして彼は、どうなのだろうか-----



マスター 「よろしいんでしょうか... そのまま時計をオブジェにされて..... 」

男    「そうしたいんですよ..... 少なくとも今は..... 」

マスター 「時間の流れに、目を背けたいと...?」

男    「今となっては忘れたいんです... 時間のことは」

マスター 「今となっては...?」

男    「そう... 今となっては、もう遅いんですよ..... 何もかも。
      だから過ぎたことは全部忘れて、時間の流れなんか無視しちゃって
      今はただこうして飲んでいたい..... そういうことなんですよ... 」


         そう云って、彼はゆっくりとカクテルを口にした.....
         それは..... 少なくとも、味わうような飲み方には見えなかった.....


マスター 「そのために口になさるお酒だと... 」

男    「ダメかな... こういう飲み方は。
      でもホント..... 今夜だけは特別なんですよね。
      いつもなら、とてもこんなペースで飲めやしないのに.....」

マスター 「左様でございますか... 」

男    「それに、マスターのカクテルが美味しいせいもあって...
      ついついペースがは早くなったのかも....」

マスター 「この場合... 光栄ですと、申し上げてよろしいのでしょうか... 」

男    「少なくとも、お客がマスターの腕を褒めてるんですから.....
      素直に喜んでいいと思うな」

マスター 「ありがとうございます」

男    「いえいえこちらこそ..... こんなに美味しいカクテル、飲ませてもらって」

マスター 「でも..... 」

男    「...?」

マスター 「本当によろしいんでしょうか... 待たれてる方の事も、このままで... 」

男    「... 待たれてる方、か... 」

マスター 「もしかして、今もまだ... 」

男    「それはありえないな、絶対に... あいつが待ってるわけがない...
      いつだってそうだったんだから... 」

マスター 「いつだって...?」

男    「最初の時は... ちょとしたことでケンカになって、腹いせに他の男とデート
      してたくせに... やっぱりコウヘイが一番イイって、自分の浮気を棚に上げて
      何食わぬ顔して甘えてるくし... 」

マスター 「無邪気な方なんですね... 彼女は」

男    「二度目の時も、オレが仕事で忙しくて会えなかったのを理由に、やっぱり
      他の男と一緒に遊んでて、オレにバレた途端、コウヘイが会ってくれなかった
      からだって、逆にオレが責められて... 」

マスター 「寂しかったんですね、きっと... 」

男    「そして三度目の今回も... たまたまホテルのラウンジで、見慣れない男と一緒に
      いるとこ見かけたんで、その時のこと聞いてみたら... 」

マスター 「彼女は何と...?」

男    「昔からの知り合いで、友達感覚の間柄だったのに、意外にも女として自分の
      事を考えてくれてて...
      いきなりあの時、真剣にプロポーズされたんだって... 」

マスター 「プロポーズ、ですか... 」

男    「今度もどこまでまともな話やら...
      それでいて今夜、俺と一緒にいたいから絶対に会ってくれって、強引に待ち
      合わせ ...
      いつもこんな調子だから、いい加減にしろって気分なんですよ... 」

マスター 「でも今回のプロポーズの件が... 彼女にとって、本当に真剣なお話だったと
      したら... 」

男    「...え...?」




posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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