2011年06月03日

呪 文 -scene:4-




     呪文...

     その不思議な言葉を唱えると、奇跡が起こるのか...
     それとも...
     その言葉ような羅列の音階に隠された力がそうさせるのか...
     人は時として、それぞれの想いの初瀬をその呪文に託す...

     そう...
     あの時の彼女も、確かにそうだった -----



マスター 「お待たせいたしました... どうぞ」


     彼女たちの前に、グラスが置かれた...


ナツコ  「私はあんまり興味ないな... そういう恋の魔力とか何とかは... 」

チアキ  「でも、ホントにあるんだよ、いろんなやり方が... 」

マスター 「魔法の儀式というものですね... 」

チアキ  「あ〜! マスターも興味ありですか?!」

マスター 「というより... 素敵じゃないでしょうか... 」

チアキ  「そうですよね!」

マスター 「それに少しミステリアスで、何となくロマンティックなような... 」

ナツコ  「そうかなァ... 」

マスター 「それでご存知なんですか? お客様はその儀式を」

マスター 「そう... たとえば満月の夜に、媚薬を入れた銀のグラスに月を映し出し
      呪文を唱えてその媚薬をゆっくりかき混ぜて飲むと、恋の魔力が与えられる
      とか... 」

ナツコ  「まさか... 迷信よ、そんなのは」

マスター 「お詳しいんですね... 」

チアキ  「いえ... ずっと前に何かの本で読んだことがあって... 」

ナツコ  「どおりでそれらしい内容の話しなわけだ... 」

マスター 「でも... 雰囲気のある、どこか神秘的な香りがする儀式ですね... 」

チアキ  「そうですよね... 何かいいですよね、マスター」

マスター 「試されたことはおありなんですか? その儀式を」

チアキ  「いいえ、まだ一度も」

マスター 「それはどうしてでしょう...?」

チアキ  「少しおっかなくって... それにどんな媚薬を使えばいいのか知らないし... 」

ナツコ  「たとえその媚薬がわかったとしても、そんなの迷信よ。
      だいたいもしそれがホントに効くものなら、世の中の恋する乙女、みんな
      ハッピーになるじゃない」
  
チアキ  「そりゃ、そうだけど... 」

マスター 「失礼ながら...
      いずれにしましても、今夜ここでお待ち合わせの方と関係のあるお話のよう
      ですね... 」

チアキ  「...そうなんですよね... 」

ナツコ  「もうこんな時間か... ダメかもね、チアキ... 」

チアキ  「...そんな... 」

マスター 「もしかしてそれは...
      必ずここへ来られるとは限らないということなのでしょうか...」

ナツコ  「そうですね... 守られることのない、約束なのかも... 」

マスター 「それで、恋の魔力だったと... 」

ナツコ  「実は彼女、離れかけた彼の心をもう一度振り向かせるために、今夜12時
      ちょうどに彼とここで待ち合わせの約束をしたんです... 」

マスター 「...12時ちょうど... 」

ナツコ  「それでもし彼が来なかったら... それは彼女に対しての彼の気持ちという
      ことで... 」

マスター 「ジ・エンド... 」

ナツコ  「そうですね... 」

チアキ  「...彼は... 彼はきっと来る... 来てくれる... そうに決まってる... 」

ナツコ  「チアキ... 」

マスター 「お待ち合わせの約束は、そもそもお一人で?」

ナツコ  「ホントはね。でも彼女がどうしてもついて来てくれっていうから... 」

マスター 「ではそのお待ち合わせの方は、こちらのお客様がお一人でここへ来て
      いらっしゃると...?」

ナツコ  「そうですね... きっと」

マスター 「そうでしたか... 」

ナツコ  「?... どうかしました? マスター」

マスター 「いいえ... それより、一度お試しになりませんか?」

チアキ  「試すって...?」

マスター 「恋の魔力をです」

ナツコ  「まさか... 」

チアキ  「そんなこと... 出来るんですか? マスター」

マスター 「...実は... 不思議な力を持つカクテルがひとつございまして... 」

チアキ  「ホントですか? マスター!」

マスター 「そのカクテルの名前は... ソルシエール... 」








posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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