2011年06月30日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:final-


バーテン  今宵も「バール サンドリオン」へお越しいただき、誠にありがとうござい
      ました...
      ではここで...
      今回登場致しましたカクテルを、改めてご紹介させて頂きます...

      カクテルの名前は、「エックス・ワイ・ジィ/]・Y・Z」.....
      あの有名なサイドカーのヴァリエーションカクテルとして知られており
      ラムの中でもライトであるホワイト・ラムを使い、軽く爽やかに仕上げるのが
      ポイントのカクテルです.....

      その色合いは淡い白で、シンプルゆえにピアな味わいが生きており
      レモンの爽やかな酸味と、甘くほろ苦いホワイト・キュラソーの味が一つに
      溶け合ってラムを包み込み、とても口当たりの良いカクテルに仕上がっており
      ます...

      レシピは... ホワイト・ラム(2/4)とホワイト・キュラソー(1/4)、それに
      レモン・ジュース(1/4)をよくシェイクし、カクテル・グラスに注げば出来上
      がり...
      まさにシンプル・オブ・ザ・ベスト... そう呼べる一品です.....

      それにしてもエックス・ワイ・ジィとは ...
      何やら秘密めいた香りが漂う不思議な名前のカクテルですが、残念ながらその
      由来は謎のままです...

      ただ ... アルファベットの最後から3文字をネーミングにする辺りからして
      終わりを意味するのだとすれば...
      飾りを捨てた究極のカクテルということを、暗示しているのかも知れません...


      ... では、最後に余談ですが...

      佐倉警部補のクイズの答え... 皆様はお判りになられましたでしょうか?

      ちなみにその答えは...
      極々簡単明瞭で、私もマスターから聞かされて唖然としましたが.....

      問題はこうでした...
      冷蔵庫にパンダを入れる3つの不可欠な条件とは...?

      それは...

      .....別の機会にお話しましょう.....


      それでは、またのお越しをお待ちしております.....

      ありがとうございました -----




- Recommended menus 1 -
- Recommended menus 2 -
- Recommended menus 3 -

posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月29日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:4-


夜の喧騒にまみれながら...
人はひと時の静寂な場所に安逸を求める...

その止め処もないそれぞれの想いを胸に...
人はつかの間の静穏を求める...
たとえそれが仄かな慰めであったとしても-----


今宵、帳に覆われたこの場末の酒場の片隅で...
一つの出来事が語られた-----



   女  ----その時、一瞬何がどうなったのか、自分でもよくわからなかった...
      気がついたらあの人が、階段の下でうつ伏せに倒れたまま、動かなかった...
      私はそれを見た途端、急に怖くなってその場から逃げ出してました...
      必死になって走ってた... 一度も振り返ることもなく...
      その内、息も絶え絶えに埠頭の辺りまで来て... ようやく私は我に返った...

      「私は人を殺めてしまった... 」

      昔の恋人であるあの人から言い寄られ、抱きついてきたその拍子に私は
      思わず突き飛ばしてしまった...
      その弾みで彼は足元を取られ、階段から転げ落ちてしまった-----

      これでもう、すべてが終わり...

      私は途方に暮れ、いつの間にかここへやって来た...
      自分を戒めるため... そして慰めるため... ここバール・サンドリオンへ-----


バーテン 「そうだったんですか... 」

マスター 「サヨコさん... 」

   女 「(泣きながら)私、そんなつもりじゃなかったのに... ホントにそんなつもり
      じゃ... 」

マスター 「信じてます... 只々偶然がそんな結果を招いただけなんだと... 」

   女 「マスター... 私... 」

バーテン 「こういう場合は、正当防衛では... 」

マスター 「そうですね... 状況から鑑みてもそうなるのでは... 
      その辺りはいかかでしょうか、お客様... いえ、刑事さん... 」

   女 「エ... ?!」

バーテン 「刑事って... 」

   男 「今の段階では何とも云えませんが... 少なくとも故意によるものではないと?
      お嬢さん」

   女 「はい、もちろんです... 」

マスター 「それではお客様...  よろしくお願いいたします」

   男 「心得ました... 」


その時、男の携帯電話が鳴った-----


   男 「ちょっと失礼... はい、佐倉ですが..... 」

バーテン 「まさかこの方が刑事さんだったとは... マスターはどうして知ってたんです
      か?」

マスター 「それは... 」

   男 「-----そうか、わかった。それじゃ、そっちへ回ってくれ... こっちは大丈夫
      だから。それじゃ... 」

バーテン 「何かあったんでしょうか?」

   男 「あなたが突き飛ばしたという被害者の方... 命に別状はなかったようです... 」

   女 「え?... ホントですか?」

マスター 「サヨコさん... 」

   男 「嘘をつく謂れが、この場にはありません」

バーテン 「よかったですね、サヨコさん... 」

   女 「(泣いている)..... 」

   男 「しかしあなたには... 彼に怪我を負わせた上、その場から逃げ去ったという
      事実がある... たとえそれが恐怖心からだとしても... 」

   女 「...はい... 」

バーテン 「刑事さん... 」

マスター 「それではやはり... このままここで... 」

   男 「しかし、生憎と私は今... 別の被疑者を探してる最中でしてね... 」

バーテン 「え?」

   男 「ここからまだ動けないんですよ... 張り込み中ってやつですか... 」

マスター 「張り込み中...? 」

   男 「そういうことですね... ですから大変申し訳ないが、最寄の交番にでも
      ご足労願えませんか... お一人で... 」

   女 「エッ...?」

マスター 「お客様... 」

   男 「それに私... ここのレモン・スカッシュを、もう一杯頂きたいと思ってるん
      ですが... いかがものでしょうか? マスターさん」

マスター 「それはありがたいお話です... ねえ、サヨコさん... 」

   女 「... ホントにありがとうございます... 刑事さん... 」

   男 「... だいたい私、根がナマクラなもので、牙を剥く野獣以外には、まったく興味
      がないものでして... 」

バーテン 「なるほど... そいうい刑事さんもいるんですね... 」

   男 「そんなことよりもマスターさん」

マスター 「ハイ...?」

   男 「あなた、よくお判りになりましたね、あのクイズの答えが ...
      私、正直言って驚かされましたよ... 」

マスター 「いいえ... あれは単なる偶然でして... 」

   男 「いやいやご謙遜を... それよりいかがですか? もう一問」

マスター 「お客様... 」

   男 「ああ、申し遅れました... 私、佐倉裕次郎と申しまして... 」

マスター 「佐倉裕次郎様... 」

   男 「これでも一応警部補でして... 以後、どうぞお見知りおきを... 」

バーテン 「警部補...?! 」

   男 「では早速問題ですが... 」




- Recommended menus 1 -
- Recommended menus 2 -


posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月28日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:3-


ある者は静かで長い夜に星の間を彷徨い...
またある者は、帳の隙間から月の明かりに愁う...
それぞれの想いを胸に一夜を過ごす...

その心模様は、儚い夢なのか...
それとも、微睡みの蜃気楼なのか...

今宵この店に集いし人々の心根は...
どんな色合いの時間を過ごすのだろう-----



バーテン 「それにしても...  今夜は珍しいカクテルを、オーダーされたんですね... 」

   女 「エ...? 」

バーテン 「いつもならスィート・マティーニがお決まりでしたので... 」

   女 「そうですね... 今夜はそんな気分じゃなかったんで... 」

バーテン 「それでX・Y・Zですか... この店では初めて口にされたように思いますが... 」

   女 「お店というより... 私自身、今夜初めて飲むカクテルですよ... 」

バーテン 「そうでしたか... 」

   女 「バーテンさん」

バーテン 「ハイ...?」

   女 「このカクテルの意味って、知ってますか?」

バーテン 「はい... マスターから教わってます... 」

   女 「そうですか... 私もある人から聞かされたんですけど... このカクテルには
      すべてが終わりという意味があるらしいですね... 」

バーテン 「すべてが、終わり...?」



男はタバコを取り出して火を点けた---
そして、ゆっくりと一口-----


   男 「時に何ですが、マスターさん」

マスター 「マスターと、及び頂ければ... 」

   
   男 「ああ... それでは、マスター... あの女性はよくここへ?」

マスター 「ハイ... ?」

   男 「いや、顔見知りの女性とよく似てるものなので... 」

マスター 「左様でございますか... 
      あの方は週に一度ぐらいの間隔で、お見えになりますが... 」

   男 「それなら常連さんだな... 」

マスター 「そうですね... 」

   男 「いつも一人でですか?」

マスター 「いえ... 大概はお連れの方と... 」

   男 「それは男性でしょうか?」

マスター 「...失礼ですが、お客様... どうしてそのようなことを...?」

   男 「いや... ですから、顔見知りの女性と... 」

マスター 「だとしても... 少し不自然ではないでしょうか... 」

   男 「そうですか? そうかなァ... いや、これは参ったな... 」

マスター 「それに先程... ここへはお仕事でと、そうおっしゃってましたが... 」

   男 「エッ...? エエ... まあ、そんな感じで... 」

マスター 「この店にいらっしゃる方の事を、あれこれと詮索なさることが... 
      お客様のお仕事なんでしょうか...?」

   男 「ン... 
      私はどうやらあなたに理解される前に、誤解されているようですね... 」

マスター 「そのようなつもりではございませんが... 」

   男 「... わかりました... それじゃ、こうしましょう」

マスター 「...?」

   男 「私が今からクイズを言いますから、あなたはそれに答えてもらえますか...?」

マスター 「クイズに...?」

   男 「そしてそのクイズに見事あなたが正解した場合... 
      あなたにすべてをお話しましょう... いかがですか?」

マスター 「果たして意味があるんでしょうか...? この駆け引きに... 」

   男 「時として無意味な言動が、思わぬ結果を招くこともあります... 
      いやこれは、私の経験上のことですが... 」

マスター 「...承知致しました... 仰せのままに... 」

   男 「ありがとう... 感謝します... それでは、問題を... 」

マスター 「何なりと... 」

   男 「冷蔵庫にパンダを入れる、三つの不可欠条件とは何でしょうか?」

マスター 「え...?!」

   男 「さあ、どうぞ... お答えください... 」


posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月27日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:2-


その男性の井出達は、紳士の香りを漂わせていた...
地味過ぎず派手過ぎず...
そうでありながら確かな存在感があった...

そしてその男性には...
優しい口調の奥に、鋭い威圧感があった-----



   男 「(店内を見回し)イヤーッ...  これは仲々、洒落たお店ですね... 」

マスター 「お褒め頂き、ありがとうございます... 」

   男 「いやね、近くに友人が住んでましてね、最近お洒落なバーがオープンしたって
      云ってたものですから... それで一度足を運んでみようと思ってたんですが...
      アハハ... なるほど... こりゃ雰囲気がいい... 」

マスター 「それはどうも... 」

   男 「マスターのセンスがうかがい知れますね... 」

マスター 「恐れ入ります...  時にご注文の方はいかがいたしましょう?... お客様」

   男 「お客様?... あ、そうでしたね。これは失礼... そうだな... 何にするかな...
      今日は少し汗もかいたことだし... サッパリしたものがいいなァ... 」

マスター 「サッパリしたものですか... それでは」

   男 「そうだ... やっぱりアレにしよう... 」

マスター 「アレとは... 何でしょう...?」

   男 「レモン・スカッシュをください」

マスター 「レモン・スカッシュ...?」


グラスに氷が入れられ、そこへスクイーズされたレモンが注がれ...
ソーダで割りながら軽くステアされる...

しばらくして男性の前に、レモン・スカッシュが置かれる-----


マスター 「お待たせいたしました、どうぞ... 」

   男 「これはどうも... いや私ね、こう見えてもこいつが結構好きなんですよね... 」

マスター 「左様でございますか... 」

   男 「(一口飲み)イヤーッ、参ったな... これはイケる... 大したもんだ」

マスター 「ありがとうございます...」

   男 「いやね、好きなもんですから、ついつい色んな所でこいつを注文するんですが
      これだけジューシーで口当たりのいいレモン・スカッシュにお目にかかれるの
      は稀ですね... きっと新鮮なレモンをそのまま使って、微妙な甘さを施されて
      いるんでしょう... 」

マスター 「確かに仰るとおりです... フレッシュジュースの類は、加える甘さの微妙な
      加減と素材の新鮮さがその味を決めてしまいますので... 」

   男 「たかがレモンスカッシュ... されどレモンスカッシュ... 私、今夜は少し
      感動してます... 類い稀なるレモンスカッシュに出会えたことに... 」

マスター 「わたくしも及ばずながら... レモンスカッシュにこれだけの含蓄をお持ちに
      なる方とお会い出来るのは、稀にして光栄です... 」

   男 「いやいや、仲々どうして... サイドメニューでこれだけのものを作られる
      このお店こそ、稀にして含蓄があるお店だとおもいますよ... 」

マスター 「そのサイドメニューとお判りになりながら、そのレモンスカッシュをご注文
      されたのには... 何か理由がおありなんでしょうか... 」

   男 「これはまた、するどい質問ですね... 」

マスター 「失礼ながら... このような深い時間に男性の方がお一人でお見えになり、
      ここで口にされるには、少々不似合いなご注文ではないかと... そう思い
      まして... 」

   男 「そうか... 確かにそうですよね。
      大の男がわざわざバーに来て、レモンスカッシュもあったもんじゃないです
      ね... これは軽率だったな... 」

マスター 「軽率...?」

   男 「いやいや、気にしないで下さい... それより私、決してまやかしや冷やかしの
      つもりでお伺いしたのではありませんから... ただ... 」

マスター 「ただ...?」

   男 「ただ、今夜はどうしてもここへ来なければなかったんです... だから私は
      今ここにこうしている... それだけのことなんですよ」

マスター 「お待ち合わせ、でしょうか... 」

   男 「そんなところですかね... 何せこれも、仕事なものですから... 」

マスター 「お仕事...?」




- Recommended menus 1 -
- Recommended menus 2 -

posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月26日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:1-




静かで長い夜の過ごし方は、人によってそれぞれ...
星の間を彷徨うのも...  月の明かりに愁うのも...
その心模様一つで決まるのだとか...

さて...
今宵この店に集いし人々は...
どんな夜を過ごすのだろうか-----



   女 「-----もう駄目なの... お終いなのよ....。...ごめんなさい... さよなら... 」


まるでシェイカーの音が合図のように...
彼女はそっと受話器を置いた.....

やがてグラスに注がれるカクテル-----


バーテン 「お待たせいたしました...  どうぞ」


彼女の前にグラスが置かれた-----


   女 「...どうも... 」

マスター 「今夜はお元気がないご様子ですね... 」

   女 「エ?... 」

マスター 「それともわたくしの気のせいでしょうか...  そんな風に感じるのは... 」

   女 「...何をどうすればいいのか、わからなくて... 私」

バーテン 「どうかされたんですか...?」

マスター 「失礼ながら... 顔色もよろしくないようで... 」

   女 「..... 」

マスター 「何ですか穏やかな雰囲気ではないようですね... サヨコさん」

   女 「いいんです... もう終わったんですから... 全部ね」

バーテン 「そう云えば...  先程お電話でもう駄目だとか、さよならだとか... 」

   女 「... 聞こえてたんだ... 」

バーテン 「あ、すみません...  そんなつもりじゃなかったんですが... 」

   女 「いいんです、別に...  気にしないでください... 」

マスター 「まさかあの方と...?」

   女 「... そうですね...  たった今、さっきの電話で... 」

マスター 「サヨコさん... 」

   女 「もっとも、彼に直接云えませんでしたけどね... 何しろ留守番電話だったから。
      一方的にメッセージを伝えただけで... 」

バーテン 「一体どうされたんですか? ... あんなに仲良くされてたのに... 」

   女 「そうよね...  ホントにそうですよね... どうしてこんな事になっちゃったん
      だろう... 私にもよくわからない...  どうしてこんな事に... 」

マスター 「何か... 余程のご事情がおありのようですね... 」

   女 「..... 」

マスター 「くゆらせたままで消えたタバコが、わたくしにそう伝えているようで... 」

   女 「... マスター... 」

マスター 「静かで長い夜の過ごし方は、人によってそれぞれ...  星の間を彷徨うのも
      月の明かりに愁うのも、その心模様一つで決まるようです... 」

   女 「... 心、模様... 」

マスター 「この店は...  そんな様々な夜を過ごされる方のためにある、ちょうど
      止まり木のようなものです... 」

   女 「止まり木... 」

マスター 「ですからどうぞ束の間...  その疲れた翼をお休めください... 」

   女 「マスター... 」

マスター 「サヨコさん...  この店は、そんな店なのですから... 」

   女 「...ありがとう、マスター... 」

バーテン 「止まり木とは... 安逸の酒場の如しか... 誰かがそんなことを云ってましたね」

マスター 「それが酒場が酒場である所以だと...  わたくしはそう思ってます」

バーテン 「そうですね... そうありたいですね...  少なくともこのお店は... 」

   女 「(思い詰めたように)マスター...  実は私... 」


その時、店のドアが開いた.....
そこには一人の男性が---


バーテン 「いらっしゃいませ... 」

マスター 「ようこそ... 」

   男 「どうも...  今晩は」


posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
blogramで人気ブログを分析 にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。